Vol.1 「危険の中にビジネスチャンスあり!ブルーバード・タクシー」
危険な状況が続いていたインドネシア事情
1997年のアジア危機で最も大きな影響を受けたのはインドネシアでした。1998 年には数度にわたる大暴動で、ジャカルタの一部などは焼け野原といって過言でない状況でした。このインドネシアでの貧困対策事業計画のために、何度目かの大暴動の日の深夜、私はジャカルタに到着しました。バスの乗客は私ひとり。本来バスが到着するべきジャカルタ中央駅へは行けず、放火による火事の中、まったく知らない場所に降ろされてしまうという状況でした。
インドネシアの主に大都市部では危険な状況が続いていました。街頭やタクシーでの強盗が頻発し、現地の人たちでさえも夜間の外出やタクシーの乗車は避けていました。
私自身、深夜にタクシーに乗ったとき、タクシーの運転手の仲間の10 数台のバイクに取り囲まれ知らない暗い地帯へ運ばれてしまったこともあります。タクシーの運転席を後ろから蹴っていたら、バイクは散り散りになり、タクシーは行き先のホテルに着いたのです。運賃もただになったのは幸運?でしたが。

信頼と品質を最重視する
日本企業のビジネスチャンスの可能性
このような状況の中で地元の人たちが「このタクシーだけは安全」と唯一安心して乗っていたのが、インドネシアに行かれる皆さまにはおなじみの「ブルーバード・タクシー」です。当時は台数も少なく、誰もがブルーバード・タクシーに乗ろうとするので、なかなか捕まえられませんでした。運よくブルーバード・タクシーに乗れたときに、運転手さんに、会社について根掘り葉掘り聞いてみたことがあります。
「安全管理は厳しく、もしお客さまからの苦情や問題の報告があれば、即解雇されます。採用選考も厳しく、何よりも善良な人間かどうか?という点を徹底的にチェックされていると思います」と運転手さんが話していたのが、とても印象に残っています。
ブルーバード・タクシーは1972 年に、たった25台のタクシーから開始しました。アジア危機下の危険な時代に飛躍的な成長を遂げ、ジャカルタ市内のタクシー会社のほとんどを買収しました。その後バリ、スラバヤ、ジョグジャカルタほか、ほとんどの大都市に進出。現在は高級タクシーのシルバーバード、レンタカーのゴールドバード、貸し切りバスのビッグバード、トラックのアイアンバード、そしてロンボックのリゾートなどの事業を展開する一大企業グループになっています。
日本の企業や日本人がアジアに行かれたり進出されたりする際、危険な場所や状況を徹底的に避けなければいけないのはもちろんのことです。が、今危険で、安心できない状況の中にこそ、信頼と品質を最重視する日本企業がビジネスチャンスを見いだせることもあるのではないでしょうか。

ジョブストリート株式会社 代表取締役 菱垣雄介
1964 年、東京生まれ。明治大学農学部卒業後、農林水産省に勤務し公共事業部門に携わる。退職後、カナダのマックギル大学農業経済学科で修士号を取得し、1997年から独立開発コンサルタントとして活動。国連機関と直接契約して経済開発プロジェクトの調査・計画を行う。2002 年より東南アジアでの技術者採用・育成を開始する。現在、ASEAN 原加盟国であるマレーシア・シンガポール・インドネシア・タイ・フィリピンとインドに500万人以上の登録者を持つインターネット採用サイト、ジョブストリートの日本代表。現在までエンジニアを中心に100 名以上の人材をアジアから日本に送りだす。
