古い歴史を持つ新しい国
ブルネイの投資国としての魅力
石油・天然ガスを産出する豊かな資源国
東南アジアのど真ん中に位置するイスラム国“ブルネイ”。正式国名は、ブルネイ・ダルサラーム国である。ボルネオ島の北西部に位置し、北は南シナ海、他の三方をマレーシアのサラワク州に接している。国土面積は5,765 平方キロメートルでほぼ三重県程度の国土に、人口38.3 万人(2006 年)豊橋市ほどの人が住む小国だが、イスラム教を国教としてハサナル・ボルキア国王の治世の下、石油・天然ガスの産出による安定した経済を維持する豊かな国だ。
「ブルネイの特徴は、何といってもその豊かな石油・天然ガス資源です。石油開発の歴史は古く、1929 年シェルがセリア地区で石油を発見し、1931年から最初の石油輸出が開始されています。また、1972 年にはBLNG(ブルネイLNG:ブルネイ政府50%、ロイヤルダッチ・シェルグループ、三菱商事各25%)がLNG の生産を開始しています」と黒田氏は語る。
石油・天然ガス部門のGDP 総額に占める割合は実質で54%(2005 年)、輸出額のほぼすべて(2005 年92%)だ。一人当たりGDP は3万米ドルを超えており、国民の所得税はなく、教育費は無料、医療費は問診療1ブルネイ・ドル(1ブルネイ・ドル= 約60 円/ 2009 年1月現在 注:ブルネイ・ドルはシンガポール・ドルと等価交換されている 出所:外務省ホームページ)のみという高福祉国家を実現している。
資源の恩恵に浴するブルネイだが、政府は、過度の資源依存型産業構造からの転換と雇用創出を目的とする経済の多様化に取り組んでおり、将来の更なる発展が期待できる注目の国である。
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BEDBが「経済戦略」を推進
経済構造改革を実際に展開するBEDB(ブルネイ経済開発庁)は、経済構造多様化の戦略を推進している。その基本戦略は、地下資源にできるだけ付加価値を付けて輸出すること、ブルネイの熱帯雨林の生物多様性を活かしたエコツーリズムを育成すること、将来を見据えた新産業を振興することにある。
では、その経済戦略は具体的にどのような計画なのだろうか?前述の「経済戦略」の下、次の2 つのインフラ整備プロジェクトが進められている。
1つは、スンガイ・リアン地域の工業団地「SPARK」開発プロジェクトで、メタノール製造、アンモニア製造などの産業集積を目指すことだ。
もう1つは、ムアラ島開発プロジェクトで、ムアラ港をハブ港として東アジア、イスラム市場への窓口にしようという構想だ。さらに、その地域には工業団地を整備して産業誘致を行なうことが考えられている。
黒田氏は「BEDBは、これら2 つのインフラ整備プロジェクトにより、石油化学分野における投資やハラール食品などの加工産業、エコ・ツーリズムなどへの投資を誘致しようと考えています。さらに、そのための相談体制も整備されています」と語る。