ベトナムで酒造り
才田善彦
(さいた よしひこ)
昭和4年3月29日生まれ(79歳)
昭和21年 福岡県立朝倉農蚕学校(現朝倉農業高校)卒業 家業に従事
昭和30年 株式会社才田組(現サイタホールディングス株式会社)設立、
代表取締役社長就任
平成12年 代表取締役会長
平成17年 取締役会長
フエフーズカンパニー(HUE FOODS COMPANY)
http://www.huefoods.com
所在地 4/114, Le Ngo Cat, Thuy Xuan-village, Hue-city, VIETNAM
(ベトナム社会主義共和国フエ市ツイスン村レ・ゴ・カット4-114)
TEL:+84-(0)54-821777
FAX:+84-(0)54-821778
代表者 代表取締役社長 才田善彦
設立 1995(平成7)年
資本金 226万米ドル(才田善彦の100%出資会社)
敷地面積 10,000㎡
工場面積 4,500㎡
従業員数 70名(全てベトナム人正社員)
事業内容 清酒、焼酎(乙類・甲類)等酒類の製造販売
長年の憧れが実現へ
ベトナム米を使った酒作り
焼酎というと、南九州を中心に醸造が盛んというイメージがある。しかし、実際はインドシナ半島が発祥の地ということをみなさんはご存知だろうか。日本における焼酎の歴史は14世紀頃はじまったとみられており、インドシナ半島から海のシルクロードを通って、琉球を経由し薩摩に伝わり、九州を北上していったのが、日本での焼酎文化のはじまりだ。
今でも、ベトナム、タイで一般的に飲まれているのは、米から造った蒸留酒であり、その風味は泡盛、米焼酎と共通のものがある。そんなインドシナ半島、ベトナムで焼酎づくりをしている企業がある。フエフーズカンパニーだ。焼酎だけでなく清酒も製造しているという同社の代表取締役社長、才田善彦氏に同社の取り組みについて聞いた。
才田氏が初めてベトナムを訪れたのは今から15年ほど前。ドイモイ政策が始まって5年くらい経過した頃で、本業の砕石事業でベトナムに来ないかという話があり、その視察のために訪問したのがきっかけだ。
「ちょうどそのころ、ベトナムでは農作業の最盛期を迎えていました。ハイバン峠を越えて、フエに向かう途中、黄金色に染まった田園風景が当たり一面広がっていました。この豊かな米を使って、何かできないかなと考えはじめたのが全てのはじまりです」
こう話す才田氏が若い頃から憧れていたもの。それは酒造り。日本では新規に酒製造業に進出することは免許の関係で不可能だったため、そのまま憧れで終わってしまうのかなと諦めかけていた夢が、ベトナムで一面に広がる田園風景を見て、「ベトナムでだったら何とかなるのでは」と実現に向け動き出した。
「さっそく友人の蔵元の何人かに相談してみました。すると『ベトナムでは気温が高く、日本酒は無理』と言われました。それでもどうにかできないかと思案し、色々と調べたところ、日本でも四季醸造(空調設備を完備し、1年を通して醸造を行うこと)が行われていることがわかり、そういう設備を整備すれば問題ないと確信するようになりました。ベトナムの米を使い、友人の蔵元の協力を得て試験製造を繰り返し、これならやれるのではというところまでたどり着くことができました。そこで、投資申請し、1995年12月投資許可を頂き、外資100%のフエフーズカンパニーを設立したのです」
もともとは本業である砕石事業の視察目的にベトナムに訪れた才田氏。しかし、そこで目にした光景がその後の未来を大きく左右することになろうとは才田氏も予想していなかったことだろう。
「砕石事業については、ベトナム現地企業との合弁事業として投資許可も頂き、あとは始めるだけというところまで準備はできていたのですが、ちょうどその頃、パキスタンで行っていた大型道路工事において大きな赤字を計上してしまい、新規の海外投資に進出するだけの体力を持っていませんでした。このため、残念ながら、ベトナムでの砕石事業進出は断念せざるを得ませんでした。砕石事業は才田組(現サイタホールディングス)の投資としていたのですが、お酒の事業は私の個人投資としていましたので、会社の業績とは関係なく進出することができました」
こう明かしてくれた才田社長は、必ずしも最初の段階で、うまくいくという絶対的な自信を持っていたわけではない。
「万一失敗した場合のリスクは自分が負えばいいと考え、個人投資としました。現時点でも私の個人出資の会社だが、時機を見て出資者の変更を行い、サイタホールディングスの子会社とするつもりです」