進出企業との提携も視野に
拡大する小売市場へチャレンジ
これまで見てきたように、ホーチミン市など大都市圏における消費の増大と、富裕層を筆頭とする新た市民がベトナム経済拡大の牽引力になっていることは間違いない。インフレ傾向についてのリスクはあるものの、金融き締め政策が採られていることもあり、いきなりバブルがはじけるような状況とはいえない。当面は成長が見込まれる魅的な市場だが、リスクがゼロというわけではない。そのあたりも考慮しつつ、積極的な進出を考えてみてはどうだろうか。
労働力不足が囁かれるが国内市場は着実に拡大
これまで製造業を中心に、ベトナムへの進出を図ってきた日本企業にも、最近のベトナム情勢の変化が影響を及ぼしている。具体的な事例としては、工業団地などへの進出を決めたものの、必要な労働力の確保がなかなかできず、他地域も含めた労働者探しに苦労したというケースが挙げられる。また、ホーチミン市近郊の工業団地への進出を考えているのだが、ベトナム北部まで労働者探しの範囲を広げて、なんとか人材を確保したという事例もある。
2000 年代初期には、募集すれば必要な人材がすぐに確保できたのと比較すると、すっかり様変わりしているという人事担当者の声も聞かれる。その理由のひとつに挙げられるのが、農村部から都市部へ労働力がすぐ移動するわけではないという、ベトナムならではの事情がある。これは国民性も関係するようだが、農村部でもそれなりに生活できているので、あえて都市部で工場労働者になる必要はない、という考え方もあるようだ。
またそれと同時に問題になっているのが、離職率の上昇だ。日系製造業の場合、最近の毎月の離職率は5 〜10%にも達するといわれる。人材難に加えて離職率が上昇する局面では、当然ながら必要な労働者を確保するのにも苦労する。このため、企業によっては用地などの準備はできているのに、工場を本格的に稼働させられないというジレンマに陥っているところもあるようだ。大都市近郊だとしても、こういう問題も最近では発生していることを、進出時には考えておく必要があるだろう。