アジアブログ

 

 
 

2010年3月9日
テト事情から考える

Brain Works Asia co.,Ltd
田口 秀一



前回、ベトナムのテト(旧正月)でも営業している店が多くなってきたという話をした。
今回も、このあたりのローカル事情について触れたい。

テトはベトナム人にとって一大イベントで、1年の中で最も重要だと言ってもよい。

日本人にとっても、年末年始といえばまとまった休みが取れる、または取りやすい時期でもあり
(もちろん職種によるが)、帰省や旅行などにあてられる貴重な時期だ。
しかし、ベトナム人にとってのテトは、そんなレベルでは ない。何にも勝る、といっていいほどの重要さだ。

テト休みは1週間から10日程度あるのが通常だ。
もちろん会社にもよるのだが、会社の所定休日が5~6日の場合でも、そこに有給休暇と土日をくっつけて
10日前後の休みにする。 そして、ほとんどの人は田舎に帰省する。
このあたりはやはり、家族との時間を大切にするベトナム人らしい側面だといえる。

田舎が遠方の人では、帰省に丸2日かかるという人もいる。 同じ国内なのに?と、日本人的には
信じがたいことだが、事実である。 交通機関が発達しておらず、また所得や生活費に比べて
飛行機代が高いベトナムでは、列車とバスを乗り継げば、 そのくらいかかってしまうのだ。

ところで、テトの朝はどんな状態なのだろうか。 日本であれば、元旦の朝は家でゆっくりして雑煮でも・・・
ということで、朝っぱらから外出はあまりしないだろう。
しかし、ベトナムは通常、朝の活動開始時間が早く、早朝から多数のオートバイが走り回っている。

文化が違えば、いたるところで生活習慣も違う。私自身、日本の常識はここでは全く通用しない、ということを、
今まで散々思い知らされている。 ということで、ベトナムのテトの朝を観察しようと、興味深く待っていた。

そして、実際は・・・やはり、ベトナムでも(テトの)元旦の朝は、ゆっくりするようだ。
そのときに撮った写真を掲載するので 見て欲しい。
写真はベンタン市場の前の大きなロータリー。
知っている人ならわかると思うが、常に多数の車とオートバイがひしめき合っている場所だ。
この明るい時間帯に、こガラガラの写真など取れるものではない。






 




ベンタン市場の周りを歩いてみた。少数の屋台が店を出している。 客はまばらだ。目立つのはバイクタクシーとシクロ。
タクシーの数が少ない隙に、移動に困った客を狙っているようだ。 のんびり歩いている私に、乗れ乗れと声をかけてくる。
その写真も掲載しておく。







思えば2年半前、私が着任したばかりの頃、当時ベトナムに赴任していた同僚から、テトは食べ物の
調達にさえ困ると脅され、 ビールと即席麺を買い込んで備えたものだ。実際には大げさに伝えられており、
店は少ないものの屋台で食事はできた。
今は、そのときよりも更に店の数は増えている印象だ。ただし、今でも日本食レストランなど駐在員を
主な顧客とする店はほぼ例外なく休みなので、ローカルの食事はちょっと・・・という人は、ホテルの
レストランや観光客向けの店に行くか、即席麺などで耐えることになるだろう。

冒頭にも書いた通り、テトは1週間から10日のまとまった休みを取るのが当然のベトナム。一緒に
仕事する立場としては、これだけの休みを当然として取られるのは本当に困る。その内、この習慣が
変わってきて、テトでも都心部に残る人が増え、開いている店も増えて、日本の正月のように
「テトだからこそセール」、 などということになるのだろうか。

個人的には、そうなるとしても、まだまだ長い期間がかかると感じる。 祝日が少ないので、まとまった
休みはテトくらいしか取りづらい。 交通手段が未整備なので、移動にとにかく時間がかかるし、
チケットを取るのも困難だ。その上サービスレベルも低いため、チケットの変更もままならない。
時間短縮したくても飛行機に乗るのは高い。 「テト気分」という、精神的要素もある。

この習慣が変わるには、その前提として大きな環境の変化が必要だ。テト事情1つ取っても、
様々なことが絡み合っており、異文化環境での生活やビジネスに戸惑いつつ、
それはそれで面白いとも感じる。

     
 


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