日本企業紹介
株式会社教育エンジニアリング研究所

 


「学ぶように仕向ける」IT 研修で
日本の教育を変える


 「教えない教育」
 
企業を対象に、IT人材を育成する研修事業を手がける株式会社教育エンジニアリング研究所(以下、教育エンジニアリング研究所)の教育方針はすばり「教えない教育」だ。「教えるのではなく、自ら学ぶように仕向けていくことこそが教育の本質だから」と話す代表取締役の木村利明氏は、白髪のロングヘアを左右に垂らし、風貌からして既成概念にとらわれない自由人を思わせる。IT研修といえばまず知識や技術を教えるところから講義を始めていくものと考えてしまいがちだが、同社では、テキストを開けることなく、いきなりハードルの高い演習に取り組むところからスタートする。「教科書どおりに話を聞いて、楽しいと思う人はいないでしょう?」。その取り組みは、現在の日本の教育に対する強烈なアンチテーゼであり、日本の教育のあり方そのものを変えていこうとする挑戦でもある。

 やる気にさせるために
 
もともと情報処理業界でシステムエンジニアをしていた木村氏。ある大手情報専門学校の開校時から教育の現場に携わるようになった。「学生たちは勉強をしに学校に来る、講師は学生に知識技術を教える。それで教育が成立すると思い込んでいました。ところが、学生たちがまったく勉強をしないんですね」。次々に学生が学校に通わなくなる現状を前に「ここであきらめたら負け」と、教育者としてのプライドが奮い立った。知識をゼロから教え込んでいく方法ではだれも興味を示さない。1つ、2つと工夫を重ねていくと、学生の目の色が変わっていった。「学ばせるように仕向ける」という教育の本質が見えてきた。
「自分たちが考えてきたことを学校という枠に縛られずに実践してみたい」と、同じ志を持つ講師や学生OBらとともに2000年に会社を立ち上げた。

 プロジェクトマネージャー向けも
 
「最もシビアに教育の効果を評価する」企業向けの研修に力を注いだ。「初めは自分たちのやり方でいいのかと不安を覚えながらのスタートだった」と木村氏。だが、顕著な効果で着実にリピーターを増やし、口コミで新たな顧客を広げてきた。4、5年が経つと国内最大手自動車メーカーからも直接声がかかるようになった。今般の不況で、各社が軒並み大幅な研修費削減に切り込む中で、教育エンジニアリング研究所の売り上げは着実に伸びている。「今では自信を持って自分たちのやり方をあらたに深めていこうとしている」と話す。技術者向け研修に加えて、現在力を入れているのが中堅管理職向けのプロジェクトマネージャー研修だ。「90年代初頭にバブルがはじけて、IT技術者の採用が減ったために、後輩を抱えないままマネジメントを知らずに育ってきた層の育成は急務」と話す。

 「新しい教育のやり方を普及させたい」
 
研修事業とともに育てていこうと考えているのが、講師養成事業だ。「教えない教育」は、旧来の教育とは180度教え方を異にする。学習者と適切なコミュニケーションを図りながら、学習意欲が向上するように常に仕向け、達成度を評価しながら到達点に導いていくスキルが必要だ。「それぞれの社内に、われわれのような講師がいることが目標」と木村氏。やり方によっては自ら首を絞めることにもなりかねないが「自分たちのやりたいことは、会社を大きくすることではなく、この新しい教育のやり方を普及すること」と明確だ。すでに「電脳適塾」という商標も取り、ビジネスの将来展開を考えている。

 
 
【FOCUS】

  通常のIT教育で講師側が用意するものといえば、教育内容を示した「シラバス」と「テキスト」の二つ。同社の場合、シラバスを補強するものとして、ケーススタディをベースに擬似プロジェクトを体験しながら学ぶ「プロジェクト型演習」資料が加わる。また、「シラバス」と「プロジェクト型演習」を踏まえた上で、全体カリキュラムと授業設計書、これに学習効果を測る成果物作成/評価指標からなる「教育プログラム」を作成。この「教育プログラム」のもと、講義を進めるための「テキスト」と、学習者の成果物の妥当解である「学習成果物例」を用意するという綿密な体系が組まれている。これらの教育を行うための「講師用マニュアル」も整えている。

【企業紹介】

■社名:株式会社教育エンジニアリング研究所
■創業:2000年5月
■代表:代表取締役 木村利明
■従業員数:12名(常勤契約社員を含む)
■住所:愛知県名古屋市中区錦町2-12-8 御幸本町ビル3F
■TEL:052-209-9566
■URL:http://www.eelab.jp
■事業内容:IT技術者研修、プロジェクトマネジメント研修、講師養成
※詳しい情報は、株式会社カナリア書房の『ニッポンをリードする企業たち チャレンジングカンパニー』
に掲載されています。



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