アジアブログ

 

 

2009年5月1日 【シンガポール】
「ベストインザワールド」

フランシス 陽子

 最近ここで、「カスタマーサービス」、「ホスピタリティ」などという言葉をよく聞くようになった。例えば先週の新聞に、シンガポールの消費者満足度が昨年に比べて減少したという話題が載っていたり、昨日のニュースでは、某研究所長が「消費者の懐を緩ませるには、カスタマーサービスの充実や接客マナーの向上がポイント」だと言っていた。このところの不況で難しくなっている消費者の心をつかむのに、皆一心である。笑ったのが、新聞の投稿欄に「カスタマーサービスの質を向上させるには、消費者の協力が必要不可欠」と、某シンガポール人が、売る側だけでなく、買う側の態度の悪さも切々と書いていた。個人的には、買う側も売る側もシンガポール人、どっちもどっちである。


 

 日本在住時、習っていた英語の先生がNYに行って、不快な思いをして帰って来た話を思い出した。某靴屋に入ったとたん、店の人間に「What you want?」と、ぶっきらぼうな態度で聞かれ、靴しか売っていない店で、服が欲しいと言ってやろうかと思ったというのだ。確かに日本ではあり得ない話である。10年前はそんなニューヨーカーの態度が新鮮に感じていた私だが、親戚の結婚式で2年程前にNYを訪れた時、何故かちょっと鼻についた。日本を離れて、あらゆる面での礼儀の大切さを切に感じていたからかもしれない。

 


 日本人の礼儀正しさは折紙付きである。これは、世界に誇れる日本文化の一つである。ここシンガポールでも、日本人のイメージとして「礼儀正しさ」「心遣い」等あるが、これらは私達日本人にとっては「当たり前」のことである。シンガポールの友人が、時間を守るのはまず日本人、続いてドイツ人だと言っていた。ということは、礼儀正しさは日本人が誇る「世界一」の一つと言ってもいい感じである。

 

 

 こんなことを言ったら大変失礼だが、ここの国の人は本当に礼儀が悪い。というか、礼儀作法の教育がないのか、何が礼儀かを知らない人が多い。別に日本人のようにお辞儀をしろと言っているのではない。まずは安心して歩道を歩かせてもらいたい。私が歩道を歩いている時、カップルが反対方向から歩いて来たとする。カップルの1人が私に道を譲ってくれなければ私が車道に出なければならない状況で、信じられないかもしれないが、私に道を譲ってくれるシンガポール人は一人もいない。私がはみ出している状況において、「すみません」と言う人もいない。皆、何も考えていないのである。何が問題なのか分からないのである。

 


 最近になって政府も、この劣悪な状況を真剣に考え始めたようだ。日本で報道されているだろうか、ここシンガポールに2010年オープン予定の「カジノ」である。世界不況の中でも頑張ってオープンさせ、観光客の誘致とここの財政に貢献させたい、シンガポールのいわば懸案事項の一つである。さてこのカジノ計画、規模はかなり大きい。そしてただオープンさせるだけでなく、これをきっかけに、サービス業の接客マナーをも改善させたいという一大計画があると聞いたのだ。

 

 

 不況の為解雇された人に対する雇用促進を目的としたものも含め、最近良く聞くようになったのがあらゆる研修コースである。中で私がニュースで観たのが接客マナーの研修。カジノ、レストラン、ホスピタリティ業等、様々な業種対象にあるようだ。

 

 

 ふと思った事、これらの研修の講師には日本人が最適だろう。ここの日本料理店で働く人対象の研修所があるのを耳にしたことがあるが、確かに日本料理店で働いているシンガポール人は全くの「別人」である。色々みっちり教え込まれているのか、完璧ではないにしても礼儀は正しい。

 


 カジノオープンでシンガポール人のマナー向上、個人的にはかなり期待している。

 




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