アジアブログ

 

 
 

2009年3月4日 【シンガポール】
シンガポールの「元気印」を日本へ 
~インバウンドツアーの可能性~


岩田 朋之

 去る2月10日から14日まで、約3か月ぶりにシンガポールへ出張した。
 

  オフの時間に2度、高所から都市を展望するチャンスがあった。弁護士の友人とランチした高層ビルの最上階から、そして現在世界最大を誇る観覧車がピークに達した時の二回だ。薄暮時に観覧車から見下ろしたビジネス街の景観には思わずため息が漏れた。


  その美しさを2点の写真で少しでもおすそ分けができたなら幸いだが、少し注意深く画面をご覧いただければと思う。


 


  あちこちにクレーンが立ち上がり、何かしらの建物の工事現場があるのに気づかれただろうか?実はこれらはすべてカジノの工事現場である。


  2010年プロジェクトとして、シンガポールはカジノを解禁し、マカオを凌ぐアジア、いや世界一のカジノリゾートオープンを目指して走っている。


  数年前、地元紙The Straits Timesでは、次々に決定されるカジノの落札業者が紙面を賑わせていた。その大半がラスベガスで実績のあるアメリカ資本であったことが印象に残っている。金融立国シンガポールは元来米英経済の影響を大きく受けている。「カジノキャピタリズム」と揶揄され、ウォールストリートから矢継ぎ早に新しいデリバティブを世に送り出し、世界中を跋扈していたアメリカ資本が本物のギャンブル界においても貪欲に利権をものにしてゆく様には、少なからず苦々しいものを感じていた。


  金融危機、信用収縮という言葉がはや使い古された常套句になった今、この国家事業である2010年プロジェクトには暗雲が立ち込めているようだ。カジノリゾートの建設には遅延が生じ始め、一部の工事は頓挫しているという。


  とはいえ、今年の秋には第2回目のF1グランプリが予定通り開催されるし、街を歩いていてもあちこちのショッピングモールには以前と変わらず人が溢れており、シンガポールの国力、経済力は堅調を保っているという印象を肌で感じることができた。良い悪いは別として、ひと頃の日本のように、街にはブランドもののバッグを提げて闊歩する若者があちこちにいる。パラゴンなどの高級モールにも若者が引きも切らず吸い込まれてゆく。


  そして日本では見ることのないもう一つの光景も変わらずあった。大型書店の床に座り込んで専門書を熱心に立ち(?)読みする若者たちだ。


  消費意欲、知識欲、上昇志向、総じて括るならパワー、エネルギーはこの国にはまだまだ健在であり、それを目の当たりにするたび日本の先行きに不安を感じてしまう。


  話はがらりと変わるが、今、日本の旅行業界が優秀な人材をシフトさせ、力を入れてきているのが「インバウンドツアー」、つまり外国人を日本へ招き入れる旅行である。私が働く大阪でも、週末に街へ出れば中国や韓国からの旅行者を必ずといっていいほど見かけるようになった。


  どうも今のところこうした近隣国からの導引にばかり注力しているようだが、たとえばこのシンガポールから旺盛な消費意欲と知識欲を持った人たちを迎え入れていくというプロジェクトは組めないだろうか。



 
 
 


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