アジアブログ

 

 

2012年4月20日 【ミャンマー】
にわかミャンマーブーム・・・踊らされていないか、日本よ

ブレインワークスグループ CEO 
近藤 昇




最近、つくづく思うことがある。
アジアビジネスに関するネタは日常のこととして、今は会う人会う人、
ミャンマーの話題で持ちきりだ。
確かに、メディアがここまで集中的にミャンマーの情報を流せば、
その情報に影響をうけるのは理解できる。
さらに背景には、空前のアジアブームがあるのも周知のことだ。

しかし、私はハッキリと言いたい。
「そんなに浮き足立っていて良いのか、日本」と。

ミャンマーは日本にとって、まったくと言ってよいほど未知の国である。
人口は今や約6,000万人、かつてはビルマ王国として繁栄した国である。
聞くところによると、当時は今のタイのバンコクより余程栄えていたとか。
しかし、軍事政権が長く続く中で、西側諸国からの経済制裁などで昨今は精彩を欠いていた。
ところが…である。
軍事政権から民主化への移行の動きの中で、
ここ最近、流れが大きく変わってきた。




  

  




にわかに注目されるミャンマーを見て、
日本はアジア新興諸国への進出で出遅れたからこそ、
“このミャンマーで勝負しよう、絶好のチャンス”だと色めき立ち、
メディアともども途端に飛びついた感がある。
“ミャンマーは親日国でもあるし、相手も待っているはず”という思惑
が先行した形であろう。

もちろん、私もミャンマーには何度も足を運んでいるし、
当社でもビジネス拠点の設立に向けて準備は以前からしている。
ただ、にわかブームの動きとは違う。

ここで、工場進出にテーマを絞り、日本とアジアの関わりを大まかに振り返ってみよう。
1960年代後半から、国内事情である労働力不足や賃金上昇、また円高を背景に、
日本企業の海外進出が盛んになった。
中でも、90年代後半に、タイから始まり東アジア全体に波及したアジア経済危機の最中、
タイへの救援の手を差し伸べたこともあって、
日本の中小企業の進出が一番成功したのがタイである。

その後、安い人件費と新たなる事業ドメインを追っかけて、
今度は中国での工場進出が盛んになった。
ところが、SARS問題も相まって、チャイナプラスワンとして
ベトナムが注目を浴びてからまだ10年もたっていない。

これら歴史的背景の流れの中で、今、ミャンマーが注目されているのは、
一義的に工場進出が理由だろう。
特に繊維関係の労働力確保では大きなアドバンテージがある。
またIT分野も潜在能力は高い。
この一連の動きを、経営者の合理的な経営判断に基づく動きととれば、
とても理にかなっているし、優れた采配だといえよう。
コスト削減はどんな企業にとっても死活問題なのだから。

では、ミャンマーの次はどうなるのか?
さらに人件費が安い国を探すのかと考えたらどうなのか?
人件費の安さを世界中に追い求めて、日本企業は走り回るのか?
あまりにも、短絡的すぎないだろうか。
しかし、このような動きと相まって、
すでにベトナムはチャンスがほとんどないと、言い切る人もいる。
過去の国だと。

果たしてそうだろうか?
メディアの情報に振り回され、現場を訪れない日本は
あまりにもアジアビジネスの現実が見えていないし、地に足がついていない。
隣のビジネス強国である韓国の動きやアジア各国での活躍ぶり見ていると、
日本の稚拙な動きがより鮮明になる。

韓国勢は日本に負けず劣らず、アジア各国での工場進出に力を入れている。
この意味では、確かにライバルと言えよう。
しかし、アジアのマーケットを確かに掴めているか、
その国に自国の本物のファンを作れているか、
などという視点で考えると、日本は圧倒的に韓国に先を越されているのである。
既知のことであるが、韓国は長年、国が一丸となり、
「韓国」そのものをアジア中に浸透させることに成功している。

これらの現実を忘れ、またベトナム、インドネシア、カンボジアなど、
今がマーケットとしてもとても魅力的な新興国をすっとばして、
いきなり『ミャンマーだ!』と声高に叫ぶ日本。
あまりにも短絡的すぎる。

当社としてはミャンマーは、10年先ぐらいに本格的なビジネスができればよいと考えている。
それは、ベトナムでの経験からきている。
十数年前、当社がベトナムで活動を始めたころは、
ベトナムのことをいくら日本に伝えても、反応する人はほぼ皆無だった。
そして今のミャンマーは、その当時のベトナムよりも相当遅れている。

いくら潜在能力があるといっても、
国の発展、経済の発展にはそれ相応の時間が必要だ。
その中で、とりわけ日本がアジアで貢献すべきひとつは、種まき型のビジネスである。
今はベトナムやその周辺国で地道に種まきをして、10年後に大きく収穫がある。
そういうビジネスが今のアジアでは必要なのだ。





  

  




ミャンマーで種まきをするのならまだしも、
感覚的に、行って直ぐに実りがあるかのような風潮はいかがなものか。
もっと冷静かつ迅速に、的確な場所のアジアで真剣勝負してほしいものだ。
ミャンマーのことは、ぜひ、この本で勉強していただきたい。
それから考えても遅くないだろう。


「歴史物語ミャンマー 独立自尊の意気盛んな自由で平等の国」(上巻・下巻)

山口 洋一 著  株式会社カナリア書房 発行

元ミャンマー大使だから書けた、ミャンマーの真の歴史と新しいイメージ。
忠実な事実紹介だけでなく、駐在経験からの豊富な知識が分かりやすく
歴史を教えてくれる。ニュースや新聞には載らない歴史物語。



http://www.canaria-book.com/html/book/book_2011.html#197

  

 






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