アジアブログ

 

 

2011年9月12日 【アジア全般】
水牛とスマートフォンに何を感じますか?

ブレインワークスグループ CEO 
近藤 昇


ベトナムをはじめ、アジア各国を飛び回っていると段々と目が慣れてくる。
10年前に初めてベトナムに訪れたときは、見るもの感じるもの全てが刺激的であった。
地方に行って水牛など見ようものなら、昔を思い出しウキウキしたものだ。



  



こういう体験がある。
息子が小さかった時、都会育ちの彼を徳島の実家(田舎)に連れて行った時のことだ。
普段、おとなしい息子が田舎に滞在中、
常に1オクターブ声や気持ちが高ぶっていて、別人に見えたことがある。
きっと、あれは自然の持つ何かのエネルギーや気に刺激を受けたのだろうと思う。

今の日本人が、新興国や発途上国などに初めて訪れると、
似たように刺激を受けてテンションが上がる。
これは、年代・性別関係なく当てはまる。
人によって、テンションが上がる理由は異なるだろう。
私の世代以上の人は、昔の日本を思い出し懐かしさを覚え郷愁に浸るのである。
まさしく“三丁目の夕日”の時代を彷彿とさせてくれる。
とりわけ高度成長期に自力で戦った事業家は、血が騒がずにはいられない。
一方、若い世代は今の日本では存在しない環境や人の生活の様に
何かを感じ、理由は定かではなくても刺激を受けるのである。

人間は長年、平穏で平和な環境に身を置いていると、時には刺激を求めたくなるものだ。
刺激を受けると、発想も豊かになるし、視野が広くなる。
何よりも前向きになる。
刺激というのは活き活きするための源だと思う。
“ゆで蛙状態”になっている今の日本人がアジアに触れることは、
この意味でも大切なことである。

話は少し変わるが、
最近、私は仕事柄、アジア関連のセミナーで話をする機会が増えてきた。
もちろん、偶然ではない。
自らが動いた結果として必然に増えたわけだが、
今の瞬間に、経営者の皆さんにピンポイントで何を伝えるか、非常に気を遣っている。
まだあまりアジアに触れたことがない方には、
アジアの現実、生の姿を「如何に伝えるか?」が肝心である。
ここに一番腐心しているし、毎回、新ネタを仕込んでいる。
リアリティが必要だし、具体的な話でないといけない。
また、こういう経営者もいる。
百聞は一見にしかず。
セミナーで人の話を聞くぐらいなら、自分で行って見て感じる方が早い。
もっともなことである。
こういうタイプの方は稀なのだが、これはこれで一番正しい方法だ。
しかし、経営者は皆一様に超多忙だ。
厳しい経営環境の中で日本の中だけでも舵取りは大変だ。
アジアに出かける数日すらもったいない人もいる。
また、最近は、二世三世など堅実経営派が増えてきた。
彼らはオーソドックスに経営を進める。
まずは、情報を得て確証を得てそれで考えて実行というスタイルである。

自分で足を運んで体験を先にするにしても、何にしても、
人の話は聞きようによっては有用なのである。
そんな訳で、私は如何に聞きに来ていただいた経営者の脳に電流を走らせるかを
常に考えている訳である。

最近、反応がすこぶる良いネタをひとつ紹介したい。

“確かに。そうそう”
“これは新鮮だ”
“刺激になった”

こんな反応が返ってくる。
それは、“水牛とスマートフォン”の話である。
ベトナムやカンボジアなどは、農業が最大の産業であり、至る所に農地がある。
そこには、普通に水牛や牛がいる。
昔の日本にもあった光景だ。
昔を知っている人は、懐かしさを覚え嬉々とする。
こんな場所でスマートフォンが当たり前に使われている現実を目の当たりにすると、
経営者の脳には電流が走るのである。
今の日本人の発想では、考えられないことなのだ。
私は、日本で生まれ育ったが、水牛(牛)の時代も体験しているし、
スマートフォンの体験もしている。
しかし、同時には体験していない。

つまり、これをビジネス目線で言えば、
日本人の経営者には全く未体験の経営環境がそこに存在するわけである。
ITやネットだけでなく常に最先端技術は進化している。
日本のような国は、その最先端技術を自ら開発して技術の進化をリードしてきた。
それと同時に、その技術で生活を徐々に良い方向に進めてきた。
徐々にである。
日本人にとっては、スマートフォンといえば、超高層ビルの風景が自然なのだ。
ところが、ベトナムのような国は、いわば日本の数十年前のような場所や
環境に先進国の最先端技術やしくみがすでに浸透しているのである。
日本人の目線から考えれば、まるで、最新技術を持ってタイムマシンに乗って
過去に行ったようなものだ。
そういえば、ベトナムなどから初めて日本に来た人が、未来の国と言うのと
似たようなことかもしれない。こんな場所でビジネスを成功させるには、
全く違うビジネス発想をするスキルが要求される。
もちろん、日本がかつて歩んできたやり方で、通用する分野もある。
それは、飲食、建設などだ。
一方、最先端技術が世界レベルで浸透している領域に関しては、
全く、新しい発想が必要なのである。
水牛とスマートフォンを見て驚かなくなった時が、
アジアに適応したといえると思う。



  

  







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