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2011年9月5日 【ベトナム】
アジアで見つけた温故知新の広告ビジネス

株式会社カナリア書房 代表
Brain Works Asia co.,Ltd
佐々木 紀行




ベトナムで普及が広がるデジタルサイネージ広告。
ポスター広告もうまく組み合わせている。



“昭和の匂い”がする看板がベトナムにはまだたくさん残っている。
たとえば、ベトナム・ホーチミンのタンソンニャット国際空港を降り立ち、
タクシーでゲートまで来ると懐かしい看板が目に入る。
赤い背景に「Canon」の文字。
シンプルだが、よく目にとまる。
日本にも看板は無数にあるが、あまりにも洗練されたものが多いせいか、
記憶に残るインパクトはイマイチ。
シンプルな看板は、今の時代だからこそ(というか日本人には)ウケるのかもしれない。

そういえば、ソニーの看板もアジアではよく目にする。
ある関係者が教えてくれた逸話がある。
1970年台のソニーがまだ海外では無名に近かった頃の話だ。
海外の目抜き通りに、とにかくスペースを確保しまくったソニーの広報陣がやったことは、
自社のロゴをとにかく連呼させること。
だから、海外のソニーの看板はこんな感じ。

SONY
SONY
SONY

でも、記憶になぜか残ってしまう。

交通広告の歴史を紐解けば、日本は明治5年の鉄道開通までさかのぼることができる。
広告のニーズはあっても手段が不足していた時代。
そこで、考えられたのが、先のソニーの例と同じで、いかに街中、車中の人たちに、
自分たちの存在を伝えられるか、ということ。
だから、昔の交通広告を見ると、なんだか楽しい。
シンプルだが、『伝えたい』という想いが伝わってくる。
そんな交通広告の原始的な姿が、ベトナムにもまだ残っているように感じる。
いや、ベトナムだけでなく、タイやカンボジア、インドネシアでも同様である。




ミャンマー・ヤンゴン市内の看板広告。



ところが…である。
そんな“昭和の匂い”を残しながら、クールでイカしたチャネルも存在するのが、
東南アジアの不思議なところ。
たとえば、デジタルサイネージ。
不思議と日本では馴染みのあまりない、この広告チャネル。
実は、ベトナムでは街を歩いているとよく見かける。
さらに、タクシーに乗れば運転席の上部に小さなデジタル画面が備えつけてあるケースも多い。
放映されているのは、ドラマや映画の予告宣伝や商品CMなどなど。
オフィスビルのエレベーターに乗っていると必ずといってよいほど目に飛び込んでくる。
ちなみに、その下部や横には、ポスタースペースがある。
これがまた、アナログ的で良い。
いまどき、ポスター広告なんて…と思いきや、ついつい目がいってしまう。

日本の広告業界は青色吐息の状況だ。
傍から見れば、「やれることはやりつくした」世界なのかもしれない。
何かプロモーションを考えるにも、一工夫どころか、頭を捻り回さなければならない。
世界一わがままな客にモノを売り込むために、あの手この手で忍び寄る。
中小企業や零細企業に打つ手はない。
そう思われても仕方がない状況だ。

しかし、東南アジアは違う。
ベトナムやインドネシアなど、これからの国は、途上なりに、
ゴールまでの道のりが数多く存在している。
アナログな手法もまだまだ健在だ。
低コストでより効果的な宣伝チャネルもまだまだ考えられる。
ベトナムだけを見ても、広告の世界はデジタルとアナログのふたつが入り乱れて、面白い。

ちなみに、チラシ広告の凄さは日本とあまり変わらない。
いつもポストを見るのが怖いくらい。
携帯電話のスパム広告もやはり同じ手口。
こういう類は、万国共通。
広告ビジネスは消費者との心理戦でもある。
経済成長著しい、ベトナムのような国では何がウケるのか?
そう考えると、日本の40年前の広告プランナーの出番もあるかもしれない。
まさに、『温故知新』である。
ホーチミンの街中で、いつもそんなことを考えてしまう。



カンボジア・シェムリアップのコンビニ。
チェーン系ではないので、こんなに地味な佇まいに。


 


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